先週(2023/8/17)、ガートナージャパンが毎年発表しているハイプ・サイクルの最新版を発表しました。
Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」を発表
ハイプ・サイクルとは、ガートナーが独自に編集しているもので、「テクノロジとアプリケーションの成熟度と採用状況、およびテクノロジとアプリケーションが実際のビジネス課題の解決や新たな機会の開拓にどの程度関連する可能性があるかを図示したもの」であるとしています。
具体的には、新しい登場したテクノロジーは下図に示したような段階を経て、社会に定着していくと考え、現在話題となっているテクノロジーがどの段階にあるかを図示したものです。それぞれの立場や目線からいろいろな考え方はありうると思いますが、進化が激しいテクノロジーのはやりすたりや定着状況を俯瞰的に把握するためにはとてもわかりやすい分析だと思います。また、イノベーター理論のそれぞれの階層とリンクさせて考えるのも有効ではないかと考えています。
ハイプサイクルの各段階 (それぞれの説明はガートナージャパンのホームページから引用)
・黎明期
潜在的技術革新によって幕が開いた段階で、初期の概念実証やメディア報道によって大きな注目が集まるが、実用化の可能性は証明されていない段階
・「過度な期待」にピーク期
初期の宣伝で数多くのサクセスストーリーが紹介されるが、失敗も少なくなく、行動を起こす企業もまだ多くない段階
・幻滅期
実験や実装で効果が出ないため関心が薄れている段階で、生き残ったプロバイダーが早期採用者の満足のいくように自社製品を改善した場合には投資は継続される
・啓発期
テクノロジーによりもたらされるメリットを示す具体的な事例が増え始め、理解が深まり、第2世代、第3世代の製品が登場し始める段階。ただし、保守的な企業は慎重なまま。
・生産性の安定期
主流採用が始まる段階。テクノロジーの適用可能な範囲と関連性が広がり、投資が確実に回収されつつある段階
では、今回のハイプサイクルはどんな感じだったのでしょうか?年初からかなり注目を集めている生成AIについては、「過度な期待」のピーク期に位置付けられています。この曲線上を移動していくのであれば、幻滅期に入るものの、ちゃんと効果が生み出せるプロダクトとなるのであれば、2~5年で生産性の安定期に移行すると予想されています。
その他、国土交通省のPLATEAUなどで取り組みが進んでいるデジタル・ツインについても同じような位置づけになっていますが、こちらの方は生産性の安定期まで5~10年はかかると考えているようです。
Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」を発表
では、昨年と比較するとどうなのでしょうか?昨年は9月1日に同じようなプレスリリースが行われていました。昨年は、メタバースや量子コンピューティングが「過度な期待」のピーク期に位置付けられていましたが、今年は幻滅期に移行しています。確かに昨年はテレビでも良くメタバース的なサービスが取り上げられていましたが、あまり見かけなくなったような気がします。ただ、これは技術が廃れたのではなく、より実用面における利用可能性の検討が進められていると考えられ、本当に有効な技術であれば、今後啓発期を経て、生産性の安定期に移行するのだと考えられます。
啓発期にある技術に注目してみると、2022年、2023年ともに人工知能が位置付けられています。そして、このところの生成AIの技術進化も反映してか、啓発期のより右側に移行するとともに、期間についても5~10年から、2~5年に短縮されており、より社会への定着が近づいていると考えることができます。