「AIについて」でも紹介した東大の松尾教授が理事長を務めている(一社)日本ディープラーニング協会(JDLA)が「生成AIの利用ガイドライン」を公表しました。
JDLAのサイトはこちらです → JDLA資料室(生成AIの利用ガイドライン)
このガイドラインは、松尾教授が提唱したAIに関する日本の戦略のうち、最後の「3.ユーザとしての活用を促進する」ための活動の一環になります。AIという新しい技術を忌避するのではなく、積極的に活用していかなければならない、でも現時点で気を付けなければならない点が存在しているので、それを明確にする、ということだと思います。
このガイドラインに関する解説は様々なところでされていると思いますが、ここでは、地方自治体で働いた経験を踏まえて、このガイドラインを考えてみます。
このガイドラインの本体は、以下の2つのパートから構成されています。
○データ入力に際して注意すべき事項
○生成物を利用するに際して注意すべき事項
まず、データ入力に際して注意すべき事項では、AIを使うため入力するデータという部分に関するもので、著作権や登録商標、肖像権などの権利に関するもの、個人情報や秘密情報(他者から課されているもの、自ら保有するもの)が挙げられています。
地方自治体の場合、特に、住民の情報などの個人情報や政策検討等の段階にあり公表していない情報の扱いに留意する必要があります。OpenAIなどクラウドシステムの場合は全ての情報がクラウドに上がっていくことになるため、それを前提に利用を限定するか、別のLLMを活用するなど閉鎖された情報空間を構築して活用するかについて検討する必要があります。特に、地方自治体はネットワークが業務系のネットワークはLGWAN系で閉鎖している場合が多いので、精度は落ちるかもしれませんが、後者の仕組みを検討するところが多いかもしれません。
次の生成物を利用するに際して注意すべき事項では、虚偽が含まれていないか、他者の権利を侵害していないか、生成されたものに著作権が発生内可能性等について検討する必要があるとしています。
虚偽の問題については、ガイドラインでも書かれていますが裏付けの確認が重要となります。地方自治体の実務においては、どうしてそのようなことが言えるのか、根拠を示すことが重視されます。その点で同じOpenAIの技術を使っているMicroSoftによるBing検索は根拠をリンクで示しているため、地方自治体で利用しやすいAIかもしれません。
ガイドラインの説明を行ったJDLAの会見でも言われていたことですが、このガイドラインをそれぞれのセキュリティポリシーとマージして、自らの考えとしていくことが重要なのだと思います。まずは、クラウドに載せても問題ないような使い方に限定し、結果も内部での利用に限定するなど、影響を最小限としながらAIにどのようなことができるのか、どのような限界があるのか、職員一人ひとりが体感できるような取り組みから始めていくことも一つの考え方だと思います。